思春期

 女の子が初潮を迎えるころ、男の子にはいったいどんなからだの変化がおとずれるのでしょう。
女の子に思春期かおるように、男の子にも思春期があります。

 こどもの世界から追い出され、おとなの世界に入るには、身体的にも精神的にもまだ一人前になりきれない、
この時期の悩みは男の子も同じです。あせらずステップ・バイ・ステッブで時がたつのを待つのです。

 ではまず肉体的な変化からみてみましょう。8歳から10歳になると、下垂体からの性腺刺激ホルモンは急にたくさん分泌されます。
すると睾丸のレディヒ細胞はこれまでよ り多くの量のテストステロンという男性ホルモンを分泌します。
性腺刺激ホルモンの増量とテストステロンの分泌は、精管内での精子の生産開始の合図をします。

 テストステロンの働きは10歳から14歳 ごろまでに、睾丸と陰茎を目だって発育させたりします。
 口ひげ、性毛やわきの下の毛、すね毛がはえはじめます。身長が目だってのび、筋肉や骨はがっしりとたくましくなります。

甲状軟骨が発達してのどぼとけが出てくると、声帯も肥大して声はハスキーになり、いわゆる声変わりします。
 一方、10歳から14歳の間に、精管内でせっせとつくられた精子は一定量たまると生まれて初めて外へとび出してくる現象―
すなわち精通が起こります。

 精通は眠っている最中に夢の中で起こる夢精、緊張したときや性的空想で起きる遺精など無意識な形で起こる場合と、
意識的にオナニーや性交で精液が排される射精とがあります。

 このとき、男の子は少しとまどいながらも、おとなの男になったというとても誇らしい気持ちと、りりしい気持ちが生まれているのです。
精神的な自覚は、この精通があって初めて起こるものでしょうか。

 ある調査報告によると、一般的に男の子はすでに5、6歳から漠然と性欲を感じるといわれます。
これは決して変態的なものではなく、こどもにとってきわめてしぜんなありふれたもので、女性に対するあこがれであるのです。

 これが現実に性交欲という衝動として内面から突き上げてくるのは、10年を経過した16歳ごろからです。
精通を経験した男の子は、続いて、だれでもいいから女性に接近してみたい欲望、性的なものへの関心、性交をしてみたいという欲望、
そして次に、ある一定の女性にさわってみたいと考えます。

 そこで漠然とした性交欲が意識されたり、特定の対象を求めて性交を実行に移そうとしたとき、現実には社会的、
経済的ないろいろの制約で実行できない性交欲が、外へ出ないで内向して自慰という形で発散されるのです。

 一方、女性では、初潮から始まった性的欲求は、男性への関心、性的なるものへの関心、からだに触れてみたい欲求、
キスをしてみたい欲求、そして性交欲へと発達していきます。

 ここで、男性と女性をくらべてみると、同じ性交に達するまでの過程がずいぶん違うことがわかります。
すなわち、男性は精管から生産された精子がたまりすぎると、その時点でどうしても射精してしまいたいという排泄の欲求が出てくるのです。

 女性が恋や愛を前提として行なうセックスとくらべて、男性はもう少し現実的なのだということをよく知っておいてほしいのです。

 このメカニズムは思春期から始まり、青年期、壮年期から老年期まで持続していくのです。